こんにちは。金属部品の切削加工を行う、有限会社田中機工です。
先日、社長が汎用旋盤で雄ネジを加工していたときに、「ダイスホルダー」という言葉を初めて知りました。
工場で加工の様子を見ていると、大きな機械だけでなく、初めて知る小さな道具にも出合います。何をするためのものなのか分かると、いつもの作業が少し違って見えてくるから面白いですね。
今回の主役は、雄ネジ加工に使う「ダイス」を保持する道具、ダイスホルダーです。名前は少し専門的ですが、役割を分けて考えると理解しやすくなります。金属加工に詳しくない方にも伝わるよう、基本からご紹介します。
まず、雄ネジと雌ネジは何が違うのでしょうか?
雄ネジは、棒などの外側にらせん状のねじ山があるものです。ボルトの軸の部分を思い浮かべると分かりやすいでしょう。
一方、雌ネジは、穴の内側にねじ山があるものです。ボルトと組み合わせるナットの内側が、その身近な例です。
どちらも「ネジ」ですが、外側に山を作るのか、穴の内側に作るのかで、加工に使う工具が異なります。今回紹介するのは、棒の外側に雄ネジを作るための道具です。
なお、ここでいう雄ネジ加工は、ボルトのような既製品を作る場合に限りません。機械部品の端などに、取り付けや締結に必要なねじ山を設ける場合もあります。
「ダイス」と「ダイスホルダー」は、別の役割を持つ道具
ダイスは、雄ネジを作るための工具です。切削用の丸ダイスでは、中央の穴の内側に刃があり、材料の外周を削ってねじ山を形成します。
丸い工具の中を棒が通っていくような形を想像すると、イメージしやすいかもしれません。工具の穴に材料を通すだけで完成するわけではなく、ダイスと材料の相対的な回転によって加工が進みます。
ダイスホルダーは、そのダイスを取り付けて保持するための道具です。つまり、「実際にねじ山を削る工具」がダイスで、「その工具を支えるもの」がダイスホルダーです。
筆記具で例えるなら、文字を書く芯と、その芯を支える軸のような関係です。加工する刃だけでなく、その刃を適切な状態で使うための支えも必要なのです。
ダイスホルダーは、何のために必要なのでしょうか?
金属を削るとき、工具には力がかかります。工具をただ置いておくだけでは、狙った位置や向きで安定して働かせることはできません。
ダイスホルダーは、ダイスを取り付け、加工に使える状態にする役割を担います。旋盤用のものでは、機械側への取り付けと、材料に対する工具の位置関係も大切です。
例えば、材料の軸に対してダイスが傾いた状態では、狙ったねじ山を作る妨げになります。雄ネジの加工では、刃の切れ味とともに、工具をどう支え、どう案内するかにも目を向ける必要があります。
ホルダーは完成した部品には残りません。それでも、加工を行う間に工具を支える、大切な役割を持っています。
汎用旋盤と組み合わせると、どう使われるのでしょうか?
汎用旋盤は、材料を取り付け、工具を使って外径や端面などを加工する工作機械です。作業者がハンドルやレバーなどを操作しながら、加工を進めます。
旋盤でダイス加工を行う方法の一つに、ダイスホルダーを心押台側に取り付ける方法があります。心押台とは、材料を支えたり、穴あけ用の工具などを取り付けたりするための装置です。
機械の取り付け機構を利用することで、材料と工具の軸の位置を合わせて加工するための段取りを行えます。ただし、取り付け方や送り方は、ホルダーと機械の構造によって異なります。
手で回して加工する構成もあれば、機械の回転を利用する構成もあります。すべてのダイスホルダーが同じ使い方というわけではなく、使用する機械と工具に合う組み合わせを選びます。
ねじ山の間隔に合わせて進むことも大切
ねじ山には、山と山の間隔を表す「ピッチ」があります。メートルねじの場合、ピッチ1ミリの一条ねじは、一回転すると軸方向に1ミリ進む関係になります。
ダイス加工でも、このねじの進み方に合う動きが必要です。回転に対して、軸方向の動きを無理に拘束したり、合わない送りを与えたりすると、工具や材料に負担がかかる原因になります。
そのため、ホルダーや機械の構造に応じて、加工の進行に合った動きができるように考えます。刃物を持つだけでなく、「工具がどう進むか」まで含めて、加工の仕組みが成り立っています。
ダイスを取り付ければ、どんな雄ネジでも作れる?
ダイスは、作りたいねじの種類や呼び径、ピッチなどに合ったものを選びます。似た大きさに見えるねじでも、規格や山の間隔が違えば、同じように組み合わせることはできません。
さらに、ダイスそのものの外径や厚さが、ホルダーに適合していることも必要です。「作るねじの太さ」と「取り付けるダイスの外側の大きさ」は、別の寸法です。
材料の種類や、必要なねじの長さ、周囲の段差なども検討する条件になります。適したダイスとホルダーを組み合わせ、その部品を無理なく加工できるか確認します。
雄ネジ加工は、加工前の準備にも支えられています
ねじ山を作る前には、素材の外径や先端の形を、使用する工具とねじの条件に合わせて準備します。先端の面取りも、ダイスの食い付きに関わる要素です。
切削用ダイスには、ねじ山を作り始める「食付き部」が設けられています。表裏で構造が異なる製品もあるため、取り付ける向きや固定方法の確認も必要です。
また、材質や工具に合った加工条件、切削油剤、切りくずへの配慮も重要です。ホルダーだけで品質が決まるのではなく、材料、刃物、取り付け、加工条件が組み合わさって、必要な雄ネジを作ります。
ダイスによる加工と、バイトによるねじ切りの違い
旋盤で雄ネジを作る方法には、ダイスを使う方法のほかに、ねじ切り用のバイトを使う方法もあります。バイトとは、旋盤などで使う刃物のことです。
バイトによるねじ切りでは、材料の回転と工具の送りを対応させながら、ねじの形に沿って削ります。一方、切削用ダイスは、工具に設けられた刃でねじ山を形成します。
どちらが常に優れているというものではありません。ねじの仕様、材料、形状、数量、設備などの条件に応じて、適した方法を検討します。
加工を依頼する際には、工具の名前まで決める必要はありません。図面に加え、材質、ねじの規格、必要な長さ、数量などを伝えることが、加工方法の検討につながります。
小さな道具を知ると、ものづくりの見え方が変わります
今回、「ダイスホルダー」という言葉を知ったことで、雄ネジを作る工具だけでなく、その工具を支える道具にも役割があることに目が向きました。
工場には、完成品からは見えない道具や段取りがたくさんあります。一つひとつの役割を知ると、金属部品が出来上がるまでには、さまざまな確認と工夫があるのだと感じます。
焼津市で創業37年の有限会社田中機工は、工作機械部品、船舶用エンジン部品、発電用プラントライン部品などの切削加工を行っています。試作や多品種少量の部品製作についても、ご相談を承っています。
雄ネジを含む金属部品の加工についても、図面や必要な条件を確認したうえで対応を検討します。部品の用途や組み合わせる相手の情報なども、分かる範囲でお聞かせください。
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